※これは「青の祓魔師(加藤和恵)」と「ファウスト(ゲーテ)」の二次創作です。
書斎(一)
時は16世紀ドイツ。
ある大学にファウストという名の高名な学者がいました。
知識を追い求め全ての学問を究めたファウスト。それでも尚人生に満足できず、さらなる知識を渇望していました。
ついには魔術にも手を染め、地霊を召喚し神になろうとするも拒絶されます。
ファウストは人であることに絶望し、自殺しようとして失敗しました。
次の日、ファウストは弟子に散歩に連れ出されました。すると向こうから黒いムク犬(※1)が現れました。
ファウスト:
(犬が焔の渦を引いて走っているように見えたが・・・気のせいか)
ムク犬は尻尾を振ったり、芸をみせたりして荒んだファウストの心を慰めました。和ませてくれたお礼にと、ファウストはムク犬を家に招き入れます。
いちばん上等の毛布を与えられ、暖炉のそばに寝そべるムク犬。
ファウスト:
「今夜は気分が良いな・・・。 ヘブライ語聖書をドイツ語に翻訳でもするか。」
聖書の言葉を読み上げると、ムク犬がうなり始めました。
あ、こいつ 悪魔だな。
ファウストは4大元素の精霊を同時召喚して攻撃を開始しました。
強い。さすが全てを極めし者。
ところがムク犬には全く効かないようです。ファウストはすぐに聖属性の攻撃に切り替えました。聖なる呪文でムク犬を追い詰めます。奥義「
ムク犬の正体は 悪魔・メフィストフェレス でした。彼はファウストの魂を巡り、神と賭けをしています。
しかし今は契約できそうな空気ではありません。今日のところは出直しましょう☆ ところが・・・
メフィスト:
「おや? これではわたくし、帰れませんね。」
ファウスト:
「?」
メフィスト:
「ごらんなさい。あの角のひとつが閉じていないでしょう? ああなると、入ることができても出られなくなるのですよ」
ファウスト:
「ふははは・・・!偶然とはいえ悪魔が手に入るとはな! 誰が逃がすものか!!」
ファウスト:
「自分から罠にかかりに来たんだからな!恨むなよ。」
メフィストはファウストを眠らせ、五芒星はネズミに削り取らせて部屋から脱出しました。
・・・数日後
書斎(二)
後日ふたたび、メフィストが訪ねて来ました。
メフィスト:
「今日はあなたを楽しませる方法を考えてきましたよ。見てくださいこの服。」
メフィスト:
「さあ、あなたもご一緒に★
お揃いにして出かけましょう。気が晴れますよ。」
ファウスト:
「そんなもので気分が良くなるか!」
メフィスト:
「ならば私と契約なさい。どんな快楽でも与えましょう。」
ファウスト:
「私の求めるものは快楽ではない。ありとあらゆる経験だ。愛も憎しみも悲しみも、人に果たせられたもの全てを味わいつくしやがては破滅したいのだ」
メフィスト:
「・・・いずれあなたも腰を落ち着け、快楽を楽しむ日も来るでしょう。」
ファウスト:
「現状に満足し努力をやめる日が来るとしたら俺ももうお終いだな。賭けをしよう。」
ファウスト:
俺がある瞬間に対して、留まれ、お前はいかにも美しい
といったらなら 俺は喜んで滅びよう
時計は止まり、針も落ちると良い
俺の一生は終わりを告げるのだ
ファウストは快楽ではなく経験を悪魔に望みました。
愛だけではなく悲しみも
楽しみだけではなく憎しみや苦しみを。
罪の意識や後悔も。
神に逆らい悪魔を従え、人の全てを手に入れようとするファウスト。
彼が最後に手にするものははたして何でしょうか。
さあ、長い冒険の始まりです。
(つづく)
おまけ
メフィスト:
「それでは契約の証にこちらにサインを・・・」 (ピラッ)
ファウスト:
「契約書だと・・・?!」
ファウストは”言葉”に並々ならぬ関心があり、特に序盤は暴走しがち。
たぶん、ゲーテが憑依している。
参考/引用
註
- 黒いムク犬
ドイツ語原典によるとプードルなのだそうです。
参考: https://twitter.com/mata_dor_jp/status/471247235238207488?s=20
プードルを描くとふざけていると思われそうなのでスコティッシュテリアにしました
- 遍歴学生
旅をしながら各地の大学の授業を受ける学生です。
服飾資料がみつからなかったのでフェレス卿の衣装を借りています