こちらの続きです。
ゲーテ「ファウスト」のメフィストフェレスと青の祓魔師のメフィストフェレス(以下サマエル)を比較しながらながめてみます。
観客いじりと狂言回し
「青の祓魔師」のサマエルは自分たちがジャンプSQに連載中の漫画の中にいることをメタ認知していてちょくちょく読者にアピールしてきます
ゲーテの「ファウスト」は戯曲といって舞台演劇の台本のようにして書かれたものです。その中でメフィストフェレスの台詞には観客に話しかけるものがあるのです。
- (観客席に向かって)
「もういやだ、そちらにいってもいいですか?」
- (笑っていない客に向かって)
「おや、あなたは笑っていないですね? あなたも歳をとったらわかりますよ」
こんな調子です。
また、第2部の3幕ではメフィストフェレスによる狂言回しも用意されています。第3幕においてメフィストフェレスは「フォルキュアス」という怪物に化けているのですが、劇が終わるとわざわざ観客の前で仮面と衣装を脱ぎ捨てメフィストフェレスとしての正体を現します。そして舞台の解説を行うのです。
主人公を導く鍵
メフィストフェレス 「お出かけになるまえに、褒めてあげましょう。たしかにあなたは悪魔ってものをよくご存知ですね。さあこの鍵をおとりなさい。」
これがどんな宝だかおわかりですかね? この鍵が正しい場所を嗅ぎつけてくれます。それについてゆけば母たちのところへゆけるんです。
ファウスト第2部中盤において、主人公は形而上世界に向かいます。そのとき、メフィストフェレスは主人公を導く鍵を渡すのです。
「青の祓魔師」においてもサマエルは空間移動アイテムとして鍵をつくりだします。過去編においても持ち主を望んだ場所に導く「無限の鍵」が主人公を導きました。
時よ止まれ
では約束したぞ。
私がある瞬間に対して、留まれ、お前はいかにも美しい、といったら、
もうお前は私を縛り上げても良い、
もう私は喜んで滅びよう。もう弔いの鐘がなるがいい、
もう君のしもべの勤めも終わりだ。時計はとまり、針も落ちるがいい、
私の一生は終りを告げるのだ」
あまりにも有名な契約のセリフです。美しいですね。
「時計は止まり、針も落ちるがいい」
印象的な死の暗喩です。このフレーズは契約が成った時にもメフィストたちにより繰り返されます。
メフィストフェレス 「針が落ちた。事は終わった。」
さて、青の祓魔師のサマエルは
またその封印が解除された時、中央にあった時計が壊れ 文字通りの意味で針が落ちています。