続きです
書斎2
悪魔メフィストフェレスと契約したファウスト。旅に出る準備をしていると学生が部屋をノックしました。
ファウスト:
今は出る気にならない。
メフィストフェレス:
あの学生、ずいぶん待っていましたよ。かわいそうでしょう。
そのローブを私にお貸しなさい。
ファウストの替わりにメフィストフェレスが出ていって学生の相手をします。
メフィストフェレス:
・・・それから最初の半年は生活態度にも気をつけたほうが良いでしょう。講義には朝から出て予習はしっかりしましょう。すると、先生のいうことは全部教科書に書いてあることがわかるでしょう。授業中はノートを取って・・・
学生:
よくわかりました。それから医学についてもアドバイスをいただきたいのですが。
メフィストフェレス:
医者ですか。自信満々に腕の良いふりをしていればモテます。
患者の女に手を出す方法を伝授しましょう。
学生:
? よくわかりませんが、さすがです先生。サインをください。
汝ら、神の如くなりて 善悪を知るに至らん
よく勉強するように。
学生はうやうやしくサインを受け取ると帰って行きました。
さて、ファウストの旅の準備もできたようです。いよいよ大冒険に出発です。
・・・まあ、まずは ご近所からいきましょうか。
アウエルバッハの酒場
2人は近くの酒場に出かけました。酔客たちは陽気に歌をうたっています。
メフィストは魔法で上質なワインを次々と出して振る舞います。客たちは大喜び。
しばらくは楽しく騒いでいましたが、酔いすぎた客がワインをこぼしてしまいます。すると床に溢れたワインが炎上を始めました。
「この酒はおかしいぞ」
酔客たちは次々とナイフを抜いて襲いかかってきました。
すると、メフィストは荘厳な表情になり・・・
「あなた達の意識だけを葡萄山に移動しました。5分間だけね★」
客達の混乱に乗じてメフィストとファウストは酒場から逃げ出しました。
ファウスト:
お前のいう面白いこととはこれのことか? まったく楽しくないのだが。
・・・これはまず、ファウストの方を改造したほうが良さそうです。
メフィストはファウストを魔女の家に連れて行き、若返りの薬を飲ませました。
・・・実はこの薬。ファウストは気が付いていませんが、惚れ薬の効果があります。
そこに運悪く通りかかった村娘のマルガレーテ。
ファウストは恋に落ちてしまいます。娘を口説こうとしましたが逃げられてしまいました。
マルガレーテは純朴な村娘。信心深く、罪を犯したことはありません。これでは神の加護が効いていてメフィストフェレスには手が出せません。
・・・それでは、堕落させるとしましょうか。
メフィストは盗んできた宝石を小箱に詰めてマルガレーテにプレゼントします。
不義の宝石があの娘の魂を蝕むことでしょう。じわじわ・・・じわじわとね。
ところが。宝石が悪魔によるものだとあっさり見抜かれ、神父に没収されてしまいました。
メフィストフェレス
私が悪魔でさえなければ 悪魔に身を委ねたものを・・・
ファウスト
ついに頭がいかれたか。
ファウスト
お前はもういいから俺のいう通りにしろ
作戦変更です。メフィストフェレスは隣の家の女を誘惑し、協力者に仕立て上げます。
その間ファウストとマルガレーテはデートを重ね愛を深めるのでした。
ここから先はかなりえぐい話になります。このノリで続けるのは無理なので要約を解説するのにとどめます。
前提
舞台の中世ドイツにおいては、厳格なカトリックが支配していました。
当時、未婚の女性が性的関係を持つことは罪とされました。(姦通の罪:申命記22:21)
姦通の罪を犯した女は罪の肌着一枚で村人達の前で懺悔をし、村八分となりいじめられながら物乞いをして暮らすのが当時のしきたりだったようです。
現代において「愛し合う」といえば良い意味に聞こえますが、当時においては大変な罪であることを理解した上でお読みください。
母親を毒殺
逢引きの際にマルガレーテの母親が邪魔になりました。メフィストフェレスは眠り薬と称して毒薬を渡します。
マルガレーテは自身の手で母親を毒殺してしまうのでした。
兄を刺殺
逢引きに訪れたファウストはマルガレーテの兄に見つかります。兄は激昂して切りかかってきました。決闘の末、ファウストはマルガレーテの兄を刺し殺してしまいます。
殺人者となり村から逃亡するファウスト。
マルガレーテは捨てられたと思いこみます。
妊娠するマルガレーテ
実はこのときすでにマルガレーテは妊娠していました。
家族への罪の意識、徐々に大きくなっていくお腹、迫害する村人達。マルガレーテは追い詰められ、そして・・・
マルガレーテは出産後、子殺しの罪で逮捕されたのでした。